愛知県眼科医会 ロービジョンサポートラボ vol.6 ロービジョンケアや視覚障害者への支援に関するお役立ち情報を毎号お伝えします。 − 障害年金制度A − 令和4年1月1日に障害年金の「眼の障害」の認定基準が変わりました。厚生労働省と日本年金機構が連名で出している案内では、「眼の障害で2級または3級の障害年金を受給されている方」向けに、障害等級が上がり、障害年金額が増額となる可能性があるので、お近くの年金事務所等にご相談くださいと書かれています。そうはいっても、年金事務所等では、まずは診断書を出してくださいと言われると思いますので、患者さんからご相談を受けている先生方も多いのではないでしょうか。今回は、この改正の内容とポイントをまとめました。 ■改正内容 障害年金 旧基準 新基準 @障害基礎年金1級、障害厚生年金1級 旧基準 ・両眼の視力の和が0.04以下のもの 新基準 ・視力の良い方の眼の視力が0.03以下のもの ・視力の良い方の眼の視力が0.04かつ他方の眼の視力が手動弁以下のもの 【ゴールドマン型視野計】 ・両眼のT/4指標による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下かつT/2指標による両眼中心視野角度が28度以下のもの 【自動視野計】 ・両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野視認点数が20点以下のもの A障害基礎年金2級、障害厚生年金2級 旧基準 ・両眼の視力の和が0.05以上0.08以下のもの ・8分割した指標のそれぞれの方向につき測定した両眼の視野がそれぞれ5度以内のもの ・両眼の視野がそれぞれ10度以内で、かつ8等分した指標のそれぞれの方向につき測定した視野の合計がそれぞれ56度以下のもの 新基準 ・視力の良い方の眼の視力が0.07以下のもの ・視力の良い方の眼の視力が0.08かつ他方の眼の視力が手動弁以下のもの 【ゴールドマン型視野計】 ・両眼のT/4指標による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下かつT/2指標による両眼中心視野角度が56度以下のもの 【自動視野計】 ・両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野視認点数が40点以下のもの B障害厚生年金3級 旧基準 ・両眼の視力が0.1以下のもの 新基準 ・良い方の眼の視力が0.1以下のもの 【ゴールドマン型視野計】 ・両眼のT/4指標による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下かつT/2指標による両眼中心視野角度が56度以下のもの 【自動視野計】 ・両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野視認点数が40点以下のもの ■改正のポイント 今回の改正のポイントは、障害年金の認定基準を平成30年7月に改正された身体障害者手帳の「視覚障害」に関する認定基準に合わせたことです。 身体障害者手帳の認定基準の改正については、「視力障害」は、それまでの「両眼の視力の和」ではなく「良い方の視力」を基準としたこと、等級が下がってしまう人が最小限となるよう基準(視力の2つ目の文言)が追加されたこと、「視野障害」は、幅広く普及している自動視野計に基づく認定基準が作られたこと、「視野10度以内」というそれまでの基準を排し、中心視野と周辺視野のスコアをもとに判断することとなったことが大きな変更点でした。これにより、中心視野が10度からはみ出しているけれど極度の求心性視野狭窄状態にある方や中心暗点がある方(ただし周辺の視野欠損も必要)も従来よりも等級が上がる可能性のある基準となりました。 また、それまで障害年金と身体障害者手帳で異なっていてわかりづらかった認定基準が、下の表のように、障害年金と身体障害者手帳とで完全に対応する形となったのも大きな変更点です。 障害年金の等級1級が身体障害者手帳の等級1級・2級 障害年金の等級2級が身体障害者手帳の等級3級 障害年金の等級3級が身体障害者手帳の等級4級 ■今回の改正で等級が上がるのは? 例えば視力障害では、矯正視力で右0.03左0.03や右0.05左0.05のように、よい方の眼の視力では上の等級に該当するものの、旧基準では両眼の視力を合算していたが故に下の等級になってしまっていた方などです。視野障害では、今回の変更では旧基準にはなかった視野障害での1級認定が可能となったので、視力が出ていても極度の求心性視野狭窄があった方も認定できるようになりました。視野欠損(特に周辺視野)がある方は等級が上がる可能性があるので、視野の状態を精査する必要があります。 ■まとめ 今回の改正は、身体障害者手帳の等級と連動する形での変更となっていますので、新基準で身体障害者手帳を出している方は、障害年金が何級に該当するか、目星はつけやすくなりました。患者さんの経済的なことを考えると、年金が1級になるか2級になるかによって、年間でもらえる金額に大きな差が出てきます。直近で視力・視野の検査していない患者さんには、ぜひ積極的に再評価のご提案をお願いいたします。 参考)詳細は、厚労省の委員会資料でご確認ください。 https://www.mhlw.go.jp/content/12512000/000781518.pdf 障害年金の診断書(眼の障害用) 20211118_nenkin.pdf (gankaikai.or.jp) (文責:名古屋市総合リハビリテーションセンター 田中雅之) *問い合わせ先 ・名古屋市総合リハビリテーションセンター 自立支援部視覚支援課 名古屋市瑞穂区弥富町字密柑山1-2 052-835-3523 ・社会福祉法人名古屋ライトハウス情報文化センター 名古屋市港区港陽1-1-65 052-654-4521 2022年1月