愛知県眼科医会 ロービジョンサポートラボ vol.6 ロービジョンケアや視覚障害者への支援に関するお役立ち情報を毎号お伝えします。 −白杖について− 視覚障害者が使用している白杖。どのタイミングで紹介したらよいのか、いくらぐらいで、どこで購入することができるのか、どこで使い方を習うことができるのかなど、先生方が疑問に思われていることがあると思います。そこで、今回は白杖や歩行訓練についての基本的な情報と、先生方から患者さんに白杖を紹介される際に知っておいていただきたいことをご紹介します。 ■白杖の役割について 白杖の大きな役割は、下記の3つがあります。 1.路面からの情報を受け取る これから足を運ぶ場所に段差や障害物がないことや点字ブロックがあることなどを白杖で事前に確認することで安心して前に進むことができます。 2.安全を確保する 前で構えた白杖が、体よりも先に障害物に当たったり、段差を発見することで、結果としてケガや事故を防ぐことができます。 3.視覚障害者のシンボル 白杖を持つことで周囲の人や車両が気をつけて避けてくれたり、困っている時にも援助の声がかかりやすくなります。持っただけで歩きやすくなったという方も多くいらっしゃいます。 ■白杖の種類について 1.振って歩く用の杖 主に体の前に構え、肩幅ぐらいの幅で左右に振りながら使用します。グリップとよばれる握り部がついていて、丈夫で本体の空洞が少なく情報が受け取りやすいものが多いです。 2.シンボルとしての杖 階段だけ確認したい、暗い所だけ確認したいと一時的に白杖を使用したい、もしくは周囲の方に視覚障害があることを認識してもらうために持っているだけといった部分的な用途で使用します。軽いものや細身のものなど持ち運びはしやすいものが多いです。 3.体を支える杖 体のバランスがうまく取れない、支えがないと移動が不安定だという方が使用します。介護用のT字杖やL字杖と形状は同じで、体を支えることや周囲への注意喚起が主目的で、振って歩くことはできません。 *形状には、折りたたみできるものと棒状(直杖)の2種類があります。直杖は丈夫ですが、公共交通機関や飲食店に入ったときなどの置き場に困ります。折り畳みの方は強度で落ちますが、携帯性に優れていて、鞄にしまうこともできます。 また、杖の先端(石突・チップ)にもいくつか種類があり、それぞれ特徴があるので、ご本人のご希望や歩く環境に合わせて選ぶことが必要です。 ■白杖の購入について 白杖を所持する方の身長、体型、歩くスピードや歩行環境(路面の状況など)を考慮し選択する必要があります。役所の窓口に直接行ったときに、その方の身体状況や利用目的に合っていない杖を渡されてしまうことがよくあります。視覚障害者向けの機器の取扱店で、必ず専門家(歩行訓練士等)の助言を受けて購入されることをお勧めします。 *白杖の購入費用負担 身体障害者手帳(視覚障害)をお持ちであれば、障害者総合支援法の自立支援給付(補装具)を利用し、1割負担(約600円程度の負担。所得により変動。)で購入することができます。診断書などは不要です。また、購入にあたっては、先に白杖取扱店から見積書を取り寄せておくと手続きがスムーズに進みます。参考までに、助成金を使わずに杖を購入される場合は、約6,000円〜9,000円の負担になります。 ■歩行訓練について 歩行訓練とは、白杖を使って安全に移動するための訓練です。歩行訓練と聞くと、杖の使い方だけを習うものと思われがちですが、実際にはそれだけでなく、ご本人の身体状況や環境に合わせて、残存している視力や視野をいかに有効活用したり、視覚情報以外の情報(車の音、路面の傾き、排水溝の水の流れる音、飲食店のにおいなど)を活用して、自分の体の向きや進行方向などを知り、安全に目的地まで移動できるようになるための訓練も行っていきます。 ■まとめ 白杖には用途に応じて様々なタイプがあるため、購入にあたっては専門家に相談したうえで購入することをお勧めします。白杖をお勧めいただくタイミングとしては、一概には言えませんが、障害物や人によくぶつかるようになった、階段が怖くなってきた、道に迷うようになったなどの移動に関する困りごとの話題が受診時に出てきたら、話を切り出していただいてもよいかもしれません。 視覚障害者は道路交通法第14条で白杖を所持することと定められています。ただ、周囲の人の視線が気になる、家族や子供に迷惑をかけないだろうかなど様々な不安から、白杖を所持することに抵抗を示す方は少なくありません。白杖を持つメリット、デメリットを訓練等を通して理解し、さらにご本人の気持ちの整理がついて初めて白杖を所持することに繋がってきます。白杖を進める際には気持ちの面への配慮も必要になってきます。 白杖の購入や歩行訓練について何か疑問点やお聞きしたいことがあれば、下記のお問い合わせ先までご連絡ください。 (文責:名古屋市総合リハビリテーションセンター 大塚 拓) *問い合わせ先 ・名古屋市総合リハビリテーションセンター 自立支援部視覚支援課 名古屋市瑞穂区弥富町字密柑山1-2 052-835-3523 ・社会福祉法人名古屋ライトハウス情報文化センター 名古屋市港区港陽1-1-65 052-654-4521 2021年10月