愛知県眼科医会 ロービジョンサポートラボ vol.3 ロービジョンケアや視覚障害者への支援に関するお役立ち情報を毎号お伝えします。 − 身体障害者手帳を取得するメリット − 身体障害者手帳の取得について、患者さんから相談される場合や、先生方から取得を進めるべきかご判断に迷う場合もおありかと思います。そもそも身体障害者手帳とはどんなものか、取得によりどのようなメリットがあるのか、改めてご紹介させていただきます。 身体障害者手帳は、身体の障害がある方に対して、本人の申請により都道府県知事から交付されます。障害の程度に応じて1級から6級までの等級があり、また、第1種と第2種に分かれており、公共交通機関の利用時に受けられる減免の内容が変わってきます。手帳を所持している方は、その障害の程度などに応じて、下に述べる国や自治体の各種障害福祉サービスを利用することができます。なお、各自治体の取り決めによって内容が異なる場合や制限がある場合、利用者に金銭の自己負担が伴う場合もありますのでご注意ください。 ■障害福祉サービスの利用 〇介助に関すること 「居宅介護」サービスにより、自宅での掃除、洗濯、調理、買い物、入浴介助などの支援が受けられます(介護保険サービス該当者は介護保険サービスが優先になります)。 視覚障害者固有のサービスである「同行援護」サービスにより、安全を確保しながら一緒に外出してもらえます。その際に周囲の状況を説明してもらう、外出時の代読や代筆をしてもらうなどの支援を受けられます。 〇訓練に関すること 白杖歩行や点字、音声パソコンやスマートフォンなどの操作訓練(自立訓練など)、就労のための訓練(就労移行支援)や働く場の提供(就労継続支援A型・B型)、日中活動の場の一つとしての地域活動支援センターの利用などがこれにあたります。 〇補装具や日常生活用具の給付 白杖や義眼、眼鏡(矯正用、遮光用、弱視用)は補装具、拡大読書器や電磁調理器、音声時計や音声体重計、音声体温計などは日常生活用具です(障害の程度や生活の状況、市町村によって、扱う品目や支給要件が異なります)。 ※上記の各サービスの自己負担額は原則1割ですが、前年度の所得に応じて、月単位で上限額が決まります。 ■医療費や税金・公共料金などの減免 〇等級が1〜3級の場合、医療費(保険診療分)の自己負担分の助成。 〇所得税、市民税・県民税、事業税、自動車税などの控除、非課税などの措置。 〇水道料金、国民健康保険料、NHK受信料、有料道路通行料金などの減免措置。 〇各種交通機関の運賃について、公営、私営の鉄道、航空機、バスなどの運賃の減免措置。T種かU種かによって、受けられる減免の内容が異なります。 〇公共施設(公立の動物園、美術館、博物館など)の入場料の減免。その他、民間の施設(テーマパークなど)においても、独自に減免を行っているところもあります。 ■各種手当・給付金の受給 国・県・市がそれぞれ定める特別障害者手当、在宅重度障害者手当、重度障害者給付金などが受給可能です。障害年金とは別の制度になります。 ■就労する場合の優遇措置 〇就労支援 障害者職業センター(名古屋・豊橋)などで、一般就労や復職を目指す際の相談・評価・準備等の支援を受けることができます。 また就労後は、ジョブコーチの職場訪問により、職場内外の支援環境を整え、体調や障害が配慮された中で、円滑に就労できるよう支援を受けることができます。 〇助成金の受給 障害者が働く際に必要な道具や設備を整えるための助成金を、雇用側が受け取ることができます。 ■身体障害者手帳申請の流れ 申請から交付までには1〜2か月必要です。 @申請者の居住地の市区町村担当窓口(障害福祉)にて、必要書類と指定医に作成してもらう診断書を受け取ります。 A指定医のいる病院で診断書の作成を依頼します。(指定医は市区町村担当窓口で確認できます) B申請書類に必要事項を記入し、指定医に作成してもらった診断書、申請者の顔写真(サイズは担当窓口で確認が必要です)、マイナンバーの確認できるもの、印鑑を持参して、担当窓口に提出します。 ■手帳取得時の留意点  障害者手帳に該当する視力になっても、中には「障害者手帳を所持すること」=「障害者になること」と受け止め、抵抗感を感じて手帳取得に消極的になる人もいます。手帳の取得は任意であり、必ずしも申請しなければいけないものではありません。また、取得したからといって、勤務先などに開示する義務もありませんし、必要がなくなれば返納することもできます。ただ、低い等級(軽度)であっても、上記サービスの一部を受けることはできますし、糖尿病などにより内部障害がある方の場合など、重複障害として高い等級(重度)に認定され、受けられるサービスが広がる可能性もあります。手帳を取得することで、生活面や金銭面の救済措置ともなり得るため、取得することを迷っている方には、身体障害者手帳を「支援を受けるためのツール」として活用することをご提案いただくのも、一案かもしれません。 (文責:名古屋市総合リハビリテーションセンター 鈴木小有里) *問い合わせ先 ・名古屋市総合リハビリテーションセンター 自立支援部視覚支援課 名古屋市瑞穂区弥富町字密柑山1-2 052-835-3523 ・社会福祉法人名古屋ライトハウス情報文化センター 名古屋市港区港陽1-1-65 052-654-4521 2021年4月